シュガーレスでお願いします!

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(大丈夫か……?)

私は今にも雪が降りそうな寒空にも関わらず、soleilの入り口の扉についている小窓に手をつき、店の外から厨房の中の様子を窺っていた。

経過が良好で順調に右腕の抜糸を済ませた慶太は、この日晴れてsoleilに出勤することになっていた。私は内緒で休みをもらい、こっそり様子を見に来たのである。

(腕が鈍っていないと良いけど……)

私の心配をよそに慶太は困ったような仕草も見せることなく淡々と作業をこなしている。表情はやる気に満ち溢れ、一緒に働く従業員たちに笑顔が見せることもしばしばだった。

(良かった……)

見るからに生き生きとしていて、ホッと胸を撫で下す。慶太はやっぱりケーキを作っている時が一番楽しそうだ。

右腕を怪我した時はどうなることかと思ったが、これ以上心配する必要はないなと、通行人に怪しまれて通報される前に退散しようと思ったその時。

「あれー?比呂先生、来てくれたの?」

この日、遅めの出勤だったと思しき私服の大輔さんとばったり出くわしてしまったのである。

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