シュガーレスでお願いします!
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「比呂、起きて」
「慶太……?」
慶太に身体を揺り動かされてようやく、甘い匂いが家中に充満していることに気がつく。
「比呂に食べてもらいたいものがあるんだ」
私は目をゴシゴシと擦りながら、慶太に連れられリビングへとやって来た。
ダイニングテーブルの上には、大方の予想どおり焼き立てのホールケーキがドドンと鎮座していた。
スポンジにクリームとリンゴを挟んだだけのケーキは、慶太のつくるケーキにしては随分と地味だった。お店に出す試作品というわけではなさそう。
「わざわざ作ったの?」
「うん。比呂に食べてもらいたくて」
「でも……」
昨日、soleilで慶太のケーキをひとくち食べたが、それすらもこの身体は受け付けなかった。
わざわざ作ってもらって食べないのは気が引けるが、やっぱり無理じゃないか?
訝しむように慶太を見上げると、奴には私が何を心配しているのかお見通しだった。