シュガーレスでお願いします!

「すごいっ!!慶太!!」

私はぱあっと顔を輝かせながら、このケーキを作ったパティシエに賞賛を送った。

「俺、天才だから」

慶太は腰に手を当て、鼻高々になってこのケーキを作るに至るまでの苦労を語りだした。

「本当に苦労したよ。比呂でも美味しく食べられる砂糖があるんじゃないかって、日本各地から取り寄せてさ~。こっそり食事にまぜて反応を窺ったり、配合を変えてみたり……。結局、奄美産の砂糖に行きついたんだけど、業者に問い合わせたら、入荷待ちだって言うし……。あ、リンゴは青森産の紅玉っていう品種で……」

これでもかというほど、食材のうんちくを垂れ流す慶太。

拘りだすととことん追求したくなる研究肌なのか。家ではケーキの話をあまりしてこなかったから知らなかったな。

「とにかく、離婚される前に間に合って良かった。比呂でも食べられるケーキは絶対に俺が作るって結婚する前から決めてたんだ~」

だから、慶太に黙ってよそのシュガーレスケーキを買った時にあんなに怒ったのかと合点がいった。

「soleilに残っていたのは、このケーキを作るためだったの?」

「そうだよ。家では比呂にバレるからね」

「清水さんがいたのは?」

「単なる偶然。どうしても作っているところを見学したいっていうから」

本当に全部、私の早とちりとだったってこと?

私のためにケーキを作ってるって最初から言ってくれればあんなにモヤモヤしなくて済んだのに。

こうなってくるとサプライズが上手く行って能天気に笑っている慶太を小突きたくなってくる。

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