シュガーレスでお願いします!
「あのう……。比呂先生……」
私の背中に隠れるようにしていた君島さんが、不安そうに顔色を窺ってくる。
私はやれやれと大きく肩を竦めた。
「ごめんね、君島さん。慶太のサインは私があとでもらっておくから」
こういう頭がゴリゴリに凝り固まっている女性は、相手をするだけ時間の無駄だ。
君島さんには申し訳ないけれど、今日は大人しく退散することにしよう。
サインは家に帰ってから慶太に書いてもらえばいいし。
さっさと帰れと言わんばかりの眼差しを感じ、soleilから立ち去ろうとしたその時だった。
「比呂?」
私の姿に気が付いた慶太がようやく厨房から店頭に出てきた。
「ああ、やっぱり比呂だ」
「慶太……」
出てくるのが遅いのよ、このノロマ!!と罵倒したい気持ちを、必死で抑える。
君島さんや従業員の彼女が見ている手前、怒鳴れないのが惜しい。