シュガーレスでお願いします!

「イテっ」

手の甲の皮膚を摘まんで抓り上げると、慶太は小さく悲鳴を上げて腕を離した。

「せーつーどー」

そう言うと慶太は恨みがましくジト目で私を睨んだのだった。

利き腕の右ではなく、左手にしてあげたんだから少し痛いくらい我慢して。

「比呂せんせー……」

グイグイと腕を引かれ、後ろを振り返ると君島さんが色紙を抱えたまま途方に暮れていた。
あ、すっかり忘れていた。

「慶太、こちらはいつも私のサポートをしてくれるパラリーガルの……」

君島未央奈(きみしまみおな)です!!大ファンです!!サインください!!」

君島さんは私を押しのけると、早速慶太にサインを求めに行った。

「比呂から聞いたよ。ファンだなんて嬉しいな。良かったらケーキも食べて行ってね」

「はいっ!!」

君島さんの嬉しそうな表情を見て、無事任務を達成できてホッとする。

その一方で、この光景を面白くないと感じているのは清水さんだ。

慶太がサインに応じ君島さんと握手を交わしている間、私は清水さんの突き刺さるような視線を背中に感じるたびに、密かに肝を冷やすのだった。

< 48 / 215 >

この作品をシェア

pagetop