シュガーレスでお願いします!

私は何が起こっても心を乱さぬように、深呼吸すると通話ボタンを押した。

「もしもし……」

「ひ、比呂先生っ!!助けてください!!」

電話を取るなり助けを呼ぶ悲鳴が聞こえてきて、事態が切迫しているのが良く分かった。

(葛西さんだ……)

葛西さんは1か月前、友人に連れられ奥寺法律事務所にやって来た。

配偶者からの暴力に悩まされており、相談にやってきた時には身体にはひどい痣がいくつも出来ていた。

「まずは落ち着いてください。状況を詳しく聞かせてください」

「お、夫が……。買い物から帰ったら、アパートの前に来ていて……!!わ、わたし……!!」

葛西はさんは半狂乱で自らの窮状を訴える。最後の方は殆ど言葉になっていなかった。

「分かりました。今からすぐ行きます」

葛西さんは暴力を振るう配偶者から逃れて、今はアパートに一人で暮らしている。

裁判所から接近禁止命令が出されているというのに、つきまといすることは明らかな違法行為だ。

私は部屋着を脱ぎ捨て大慌てでスーツに着替えると、とるものもとりあえず彼女の元へと駆け付けるのだった。

< 63 / 215 >

この作品をシェア

pagetop