シュガーレスでお願いします!
私は何が起こっても心を乱さぬように、深呼吸すると通話ボタンを押した。
「もしもし……」
「ひ、比呂先生っ!!助けてください!!」
電話を取るなり助けを呼ぶ悲鳴が聞こえてきて、事態が切迫しているのが良く分かった。
(葛西さんだ……)
葛西さんは1か月前、友人に連れられ奥寺法律事務所にやって来た。
配偶者からの暴力に悩まされており、相談にやってきた時には身体にはひどい痣がいくつも出来ていた。
「まずは落ち着いてください。状況を詳しく聞かせてください」
「お、夫が……。買い物から帰ったら、アパートの前に来ていて……!!わ、わたし……!!」
葛西はさんは半狂乱で自らの窮状を訴える。最後の方は殆ど言葉になっていなかった。
「分かりました。今からすぐ行きます」
葛西さんは暴力を振るう配偶者から逃れて、今はアパートに一人で暮らしている。
裁判所から接近禁止命令が出されているというのに、つきまといすることは明らかな違法行為だ。
私は部屋着を脱ぎ捨て大慌てでスーツに着替えると、とるものもとりあえず彼女の元へと駆け付けるのだった。