シュガーレスでお願いします!

「比呂先生……!!」

電話をもらってから30分ほどで待ち合わせのカフェに到着すると、葛西さんはすっかり憔悴しきっていた。

電話で指示した通り、人目のある駅前のカフェチェーンで大人しく待っていてくれた。

私の到着を待っている間、生きた心地がしなかったのだろう。季節はまだ秋だというのに、まるで極寒の地にいるかのように身体の震えが止まらない。

「私、どうしたら良いのか分からなくて……!!気がついたら比呂先生に電話を……」

「良かった……。電話してくれて。もう大丈夫ですよ」

私は怯える彼女の手を取り、安心させるように微笑んだ。

私は葛西さんが落ち着いたのを見計らい、すぐさま警察に連絡した。

しかし、現場に到着した警察の話だと葛西さんの夫は既にアパートから立ち去ったあとだった。

接近禁止命令はただの注意事項ではない。違反すると一年以下の懲役または100万円以下の罰金刑が課せられる。

アパートの場所をどうやって知ったのかは分からないが、それほどのリスクを冒してでも彼女を自分のもとに連れ戻したかったというのか。

……なんて自分勝手な男だろう。

(許せない……)

彼女の服の下には、この先数年は残るだろういくつもの青あざがある。

次に彼女が夫と対面した時には、どんな目に遭わされるか分からない。

アパートの場所を突き止められてしまった以上、彼女はもうあそこには戻れない。

私は葛西さんに仮住まいとなるビジネスホテルを手配して、連絡を受けた彼女の母親が到着するまで彼女の傍に付き添ったのだった。

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