シュガーレスでお願いします!
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「それは、比呂がいけないわね」
事前に連絡もせずに押しかけた理由を話すと、お姉ちゃんは日本刀のような鋭い切れ味で私をバッサリと切り捨てた。
慶太と暮らしていたマンションから飛び出した私が頼ったのは、5歳年上の姉の真波だった。
お姉ちゃんは私よりも一足先に結婚し、旦那さんである睦月さんと、3歳になる息子の一翔くんと一軒家に暮らしている。
「ひろちゃん、今日泊まるの?」
やんちゃ盛りの一翔くんは、さきほどから畳に正座している私の膝の上で猫のように寝転んでいる。
退屈な大人の話に飽きると、今度は脚をレール代わりに車のおもちゃを走らせ始めたのを見かねて、お姉ちゃんが一翔くんを抱き上げる。
「大体、仕事に影響が出るなら、慶太さんでなくあんたが自分でどうにかするべきなんじゃないの?」
ぐうの音もでないほど、正論である。
私をこんな風に黙らせられるのは世界広しと言えども、お姉ちゃんだけである。
「慶太さん、色々とストレスが溜まる職業でしょう?比呂に甘えているだけなんじゃないの?」
甘えているというよりは、甘やかされていると言った方が正しい気がしないでもない。