シュガーレスでお願いします!

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「この7号のホールケーキください」

「かしこまりました」

「ろうそくとメッセージプレートはお付けしますか?」

「じゃあ、この数字の“6”と“0”をください」

「かしこまりました」

その日は、記念すべき母の60歳の誕生日で、事前にプレゼントを用意できなかった私はせめてケーキくらいはと思い立って、仕事の帰りに近所のパティスリーに寄ることにしたのだった。

もちろん、パティスリーの良し悪しなど自分では分からないので、香子先生からありがたーい助言を頂いてのことだった。

(こんなお店があったんだ……)

初めて来たこともあってきょろきょろと辺りを見回すが、落ち着いた雰囲気でなかなか好感が持てる。

ショーケースに並ぶケーキはどれもキラキラとした輝きを放っており、パティシエの技術の高さが窺える。

その上、接客をしてくれたコックコートを着た男性、チラリとしか見えなかったが、香子先生好みの色男だ。

ただ、どこかで見たことがあるような気もするが、私の勘違いだろう。

ホールケーキを箱に詰めてもらっている間に、ドアベルが鳴り、また新しいお客さんがやって来る。

「わあ!!綺麗なケーキがたくさん!!」

小学校低学年ぐらいの女の子は、入店するなり一目散にショーケースに駆け出していく。

「こら、走らないの!!」

母親と思しき女性は、急に駆け出した女の子に注意を促しながら、後ろをついていく。

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