シュガーレスでお願いします!
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仕事終わりに近くのパン屋さんで慶太の好きな卵サンドを2つ買い、soleilまでの道筋を辿る。
卵サラダではなく厚焼き玉子がサンドされている珍しいタイプのサンドイッチは、舌が肥えている慶太も美味いと太鼓判を押していた。
もので簡単に釣られるような男ではないのは確かだけれど、少しでもこちらの誠意を見せておきたい。
(“愛してる”か……)
大輔さんの助言を思い出し、うーんと考え込んでしまう。
賄賂をもらってしまった手前、慶太と仲直りしないわけにはいかないよな、と自分を鼓舞してみるが効果はやや薄い。
愛してると言うだけで本当に機嫌が直るのか甚だ疑問だが、私よりも慶太との付き合いが長く、奴の性格を熟知している大輔さんが言うのなら間違いないのだろう。
(愛してーる、愛、してる……?)
頭の中でイメトレしてみても、どうもしっくりこない。
そもそも、互いが互いを好いていると確かめ合う行為は恋人関係に至るまでに必要な過程であり、結婚という最終地点に到達している以上、果たして必要なのかとも思う。
まあ、これで本当に慶太が家に帰ってくるようになれば安いものだ。
唯一の問題は自分の口からこんな甘ったるい言葉がスムーズに出てくるとは思えないところだ。