シュガーレスでお願いします!
soleilの営業時間は午前10時から午後8時まで。
当然のことながら、入り口はシャッターが閉まっていたので、裏手にある従業員用の出入り口に回る。
コンコンと控えめに扉をノックしてみたが、誰も応答してくれない。
灯りが点いているので、留守にしているということはないだろうが、ノックの音が聞こえていないのだろうか。
「お邪魔しまーす……」
小声で断りを入れてお店の中に立ち入ると、壁に囲まれた短めの廊下に出る。
従業員のロッカールームと事務室のあるガラスの引き戸を右手に見ながら、廊下の突き当りを左に折れるとスイング扉が目に飛び込んでくる。
スイング扉の方からは、人の話し声が聞こえた。
(……なんだ。いるじゃん)
無人でないことに安堵してそのまま厨房に向かい、少しだけ扉を開けて中の様子を窺う。
ピチョンと蛇口から水が滴る音のする薄暗い厨房からは、閉店後にも関わらず甘い匂いが漂ってくる。
中央に並んだ作業台の上には食材と、ケーキを作るのに必要な道具が乱雑に置かれていた。無機質な蛍光灯がコックコート姿の2つのシルエットを映し出す。
私は吸い込んだ息を吐きだすことなく、ひゅっとそのまま飲み込んだ。