君への愛は嘘で紡ぐ
久々に呼ばれ、嬉しくて思わず顔を上げた。


「久しぶり」


笠木さんが笑いかけてくれた。
たったそれだけのことなのに、静かに涙が落ちた。


「……お久しぶりです、笠木さん」


心のもやもやはすっとなくなり、自然と笑うことができた。


笠木さんが私の左隣に座る。


「じゃあ私、玲生くんの病室にいるね」


先生は涙を拭いながら、去っていった。


笠木さんがすぐ隣にいることは嬉しいが、それよりも緊張が勝ってしまい、汐里先生が座っていた場所に移る。


「今度はお嬢様が逃げる番?」
「そ、そういうわけでは……その……笠木さんの隣にいたいけど、いたくないと言いますか……」
「なんだそれ」


笠木さんは優しく笑う。


「笠木さん……雰囲気が変わりました?なんだか、優しくなりました」


トレードマークであった金色の髪は黒になっており、表情もどこか柔らかい。


笠木さんはゆっくりと顔を下げ、手元を見つめる。


「体の調子がよくても、あのころみたいにはできないんだよ」


汐里先生が言っていたつらそうな顔というものが、わかった気がする。
笠木さんの笑顔には、ときどき儚さが見え隠れする。


「……余命三ヶ月というのは、本当ですか?」
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