君への愛は嘘で紡ぐ
顔を上げた笠木さんは、驚いている。
しかし、表情はあっという間に緩まった。


「お嬢様、そんなこと聞きたくて来たのか?」


笠木さんは笑いながら言う。


笑いごとなのだろうか。
それに、私にとってはそんなことではない。


「……本当だよ」


真剣な表情で言うのだから、嘘ではないのだろう。


言葉が出ない。


「でも、これでも長く生きてるほうなんだ。もともと、二年前に死にかけたし」
「二年前って……」
「お嬢様とさよならした日」


笠木さんは遠くを見つめる。


あの日のことを、忘れるはずなかった。


どうしても笠木さんにはお別れを言いたくて、お昼休みに学校を抜け出した。
笠木さんに会えたことが嬉しくて、思いっきり抱きついた。


だけど、笠木さんは私を突き放した。


これでよかったのだと自分に言い聞かせたが、悲しい気持ちは消えず、しばらく枕を濡らした。


「手術してなんとか生きてるけど……まあ、ご存知の通り残りわずかな命ってとこかな」


笠木さんはまだ笑っている。


「……どうして、そんなに受け入れているのですか?笠木さんは、生きたくないのですか」


笠木さんが笑顔でいればいるほど、いつ死んでもいいと思っているのではないかと感じ、無性に腹が立った。
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