君への愛は嘘で紡ぐ
私はシートのそばに立ったまま、周りを見渡す。
窓越しで見た以上に、ここにいる人が楽しそうに見える。


場違いのような気がしてくる。
心から楽しんでいる人たちの中に、私がいてもいいとは思えない。


「先生、あの……」
「小野寺さん、これもういらないの?」


私の持ってきた箱を開け、入れていたものを並べ始めていた。
先生が指したのは、財布と携帯以外は入らないくらい小さい、ブラウンの肩掛け鞄だった。


その大きさに不便さを感じて以来、一度も使っていない。


「ええ、まあ……」
「これ、ブランド物だよね……?」


必要、不要で言ってしまえば、不要だから持ってきたわけで、ブランド物というのは関係ない。


「もらっても、いい……?」


賑やかな声に消されるような小声だった。


「大人としてそれはどうなんだよ」


荷物を取りに行っていた笠木さんが、戻ってくるなり冷たく言った。
重そうな段ボールをシートに置くと、腰を後ろに曲げた。


「いや、だって、ほら!我慢はよくないって言うでしょ?」


焦っているような、言い訳をされた。
笠木さんは隣でため息をつく。


「そんなにいい物か?それ」
「わかってないなあ。可愛いでしょ?」
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