君への愛は嘘で紡ぐ
彼女はカバンを大事そうに抱えて去っていった。


「フリーマーケットは、いらなくなったものを売る場と聞いていたのですが……?」
「玲生くんは、基本的にお金を取らないの」


言っている意味がわからず、首を傾げる。


「さっき言った通り、玲生くんはここにものを売りに来てるわけじゃないの。自分と仲良くしてくれる人たちが何を求めてるのかを覚えて、それを配る。ボランティアみたいなものだよ」


そういえば、少年たちに見せていたカードはいつの間にかなくなっている。
お金のやり取りは、していないように見えた。


「どうしてそのようなことを……」
「ね、不思議だよね」


先生もわかっていないということは、本人に聞くしかないということか。


だけど、笠木さんはさっきからずっと途切れないお客様と会話をしている。
邪魔はできない。


「あの、私たちがここにいる意味はあるのですか?」
「ほとんどないかな。でも、ときどき玲生くんと知り合いじゃないお客さんが来るから、そこは私たちが接客する」


接客という単語に、妙に不安に煽られた。


私にできるだろうか。
世間知らずの、私に。


そんな不安が伝わったのか、先生は私の背中に触れた。
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