揺れる被写体〜もっと強く愛して〜



「気味悪くないんですか?私、女ですよ?それに……これからだって長く一緒に仕事する仲なのに」





「気まずい…?私はむしろ吐き出してくれて嬉しいよ、ずっと溜めてたんでしょ?」




そんな優しい瞳で見ないで……
いつから気付いてたんですか……
穴があったら入りたい………




「でも私、ファーストキスじゃありません…」




「なんだ、そうなのか…」




「何でそこでガッカリ感出すんですか!?」




アハハハ…!と笑い合う。
胸のつっかえが取れたこと、
変わらず接してくれる有り難さ、
嬉しくてたまらない。




レイさんの手が私の手首を掴む。




少しだけ見上げる目線の位置。
この瞳……カメラを持つ前の瞳だ。
スイッチが入る瞬間の瞳。
綺麗過ぎて……動けない。




「私はいいよ……」




「え……」




「楓ちゃんが準備出来たら言って?」




心臓の音がうるさい………




こんなことって………




ずっとずっと憧れてきたレイさんが目の前で私の準備待ち……!?
そ、そんなの有るわけない…!!
あっ、私、お茶も出さないで…っ!




「お茶入れますねっ…!」




掴んだ手首を離してくれない。
むしろ引き寄せられた。
顔が近い……爆死する。




「そんなのいいから」




「は……はい」




クスッと笑われる。




「緊張しちゃった?楓ちゃんから誘ってきたのに」




「いや……その、何ていうか…」




アップに耐えられない。
なんて人にキスを求めたんだ…!
綺麗過ぎて、毛穴とかないし!
眼力半端なくて、どうにかこうにかメイクで誤魔化してる私は逆に萎える………






< 103 / 158 >

この作品をシェア

pagetop