揺れる被写体〜もっと強く愛して〜



ニヤリと笑うレイさんはびっくりしてる私の頬にキスするから、余計テンパっちゃって声にならない。
慌てて周りを確認する。
めちゃくちゃ小さな声で
「誰に見られてるかわからないのに…!」と訴えても響いてない様子。




「あ、そうか。こっちが欲しいの?」




「…はい?」




今度はチュッと唇にフレンチ・キス。
ダメだ……この人。
完全に面白がってる。
「私に百合疑惑?むしろ有り難いかも〜」なんて笑ってるもん。




このフワフワした感じとはウラハラに、撮影に入るとこの豹変ぶりには毎回関心させられる。
スタッフ一同、各々の作業はしながらも、被写体の前でカメラを構え…スイッチが入る瞬間だけはやっぱり見てしまう。




憑依するあの瞳を見たい想いがあり過ぎてスタッフ同士で「見た?」って確認し合うほど。
私はというと、撮り続ける後ろ姿を見ながら今日の髪型可愛いな〜とか私服どんなのだろ〜とか考えてたりして。




順調に撮影は進み、片付けに入ってる途中。
「レイさんの携帯ってどこにあるかわかります?」と後輩のアシスタントが聞いてきた。




「何かさっき探されてました…横田さんなら番号知ってるんじゃないかと思いまして」




「わかった、かけてみるよ」




携帯どこ?ってレイさん……
撮影入る前に充電しといてって私に渡してきたじゃないですか。
ちゃんと楽屋に充電してますよ?




急いで楽屋まで取りに行く。
すぐに取れるし暗くてもわかるからと電気はつけずに入った。
奥のくぼんだスペースにコンセントがあるのでそこに充電してある。
ほら、あった。








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