揺れる被写体〜もっと強く愛して〜




カメラを持つ手にレイさんの左手が重なる。
運転しながらポンポンって。




「自信なんて後からだからね?まずは自分の撮りたいものを見つけること。本能に従うんだよ?」




「レイさんはずっと本能に従ってきたんですか?」




「従えない時もあったけど……今は従って良かったと思うよ」




本能に従ったら……どうなるのかな。
自分が撮りたいものって……?
すかさずカメラをレイさんに向けてみる。
怒っちゃうかな?




チラッとこっちを見ながら
「私か?今日は何でもアリだから撮っていいよ〜」って神か!
こんなに嬉しいことはない!!
いつもならドスの効いた声で「殺すよ?」と言われ写真嫌いが浸透してたのに!




「楓ちゃんだけだからね?」なんて照れちゃいます。
本当に私で良いんですか?
震えて手元狂いそう……




2人だけのデート。
ちょっとした日帰り女子旅なのかな。
車から降りたら海沿いを歩いたり、
カフェ巡りやインスタ映えなどのフォトジェニック巡りを楽しんだ。




途中でアングルの指導、
露出補正やホワイトバランスでの色味調整のコツをより深く学ばせてもらった。
スキルが違う分、差は出てしまうけどやっぱりレイさんに教えてもらうと格段にレベルが上がる。




これだけの時間を割いていただいて感謝しきれない。
絶対に吸収しまくって恩返ししなきゃ。
レイさんは越えられないけど、すぐ後ろに居る存在ではありたい。




「疲れた〜温泉入ろ?」




その一言で向かった温泉地。
撮り方も褒めてくれたし、
良いショットたくさん撮れたから超ご機嫌な私。
そんな私を優しく微笑んで見てくれるレイさんを本当は一番撮りたい。




今日は何でもアリらしいから……
勇気出してみようかな。





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