揺れる被写体〜もっと強く愛して〜



「ね?楽だよ〜後腐れないし。だから一人には絞らないの」




そ、そうなんですね……




「でも、一途に誰かを愛して…浮かれたり…嫉妬したりするレイさん見てみたかったな」




「そんな気持ちどっかに置いてきたな〜もしまだ持ってたら…結婚してたかな」




「えっ…!結婚考えた人居たんですか?」




「そりゃ……居たかな?1人だけ」




「うわ〜レイさんの心を奪って結婚意識させた人ってどんな人なんだろー?気になる〜!」




「私をカメラの世界に導いてくれた人だよ」




わ、巨匠……的な?
やっぱりレイさんにもそんな人が居たんだ。
「ハハ、完全に失恋だったんだけど」と言う横顔はとても悲しげで胸の奥がキュ…ンとなる。




「レイさんが失恋っ…!?」




「うん……その人結婚してたから」




そんな漫画みたいな話……あるんですね。
ていうか最近不倫漫画読んだんだった、一緒にしてごめんなさい。




「こう見えて私、不倫だけはタブーなのよ」と自虐的に笑う。
知ってる。
レイさんって線引きが上手いから。
ルール違反にはめちゃくちゃ厳しい人だから。
その分、きっと手放してきたものも多いんだろうなって何となく思う。




「諦めたんですね……それは仕方ないですよ……先が苦しいだけですもん」




「苦しいからイタリア行き決意したんだけども……まぁ、若い頃の話?」




「それでここまで登りつめたんですからやっぱりレイさん凄いですよ…!きっとその方も喜んでくれてますよ」




「喜んでくれてるのかな?どうだろ…」




「喜んでます…!」




「おぉ、楓ちゃんが言い切った…アハハ!」




喜んでますよ…絶対。
結婚してなかったら迷うことなくその人の手を離してなかったんだろうな……
結婚したいって思えるほどの人だったのに。
それはなかなか辛い………






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