揺れる被写体〜もっと強く愛して〜
「もしかしてその経験があるから深く付き合わないようになっちゃったとかですか?」
「うーん、どうだろうね?まぁ、そうじゃなくても男は寄ってくるし?どっちにしろこのスタイルになってたと思うよ〜?」
カメラを取り上げられて隣に座ったレイさんは、私の手を取りネイルを始めた。
「楓ちゃんのおかげで女の子もOKな体になっちゃったし?」
「わ、私のせいじゃ…っ!ないです…」
クスクス笑う。
またからかわれた……
「キスの仕方教えてください…とか言うから」
「そっ…それは……!うぅ……ごめんなさい…」
そうでした……
今思えば死ぬほど恥ずかしい。
私の反応を楽しみながら片方の手を塗り終えた。
「楓ちゃんは居ないの〜?本気で好きな人」
「い、居ないです……」
そう言えばこの3年半くらいはレイさんのことで頭がいっぱいで、勝手に憧れて……勝手に焦がれてた。
関係を持った男性のことは全部把握してて……たまに嫉妬したりしてたのかも。
いつの間にか憧れを追い越してたのかな……?
あの時初めて意思表示してしまった。
欲しくなって……キスをせがんだ。
レイさんを求めてしまった。
「でもキスはしたかったんだ?」
「はい……すみません」
「本当、分かりやすいよね楓ちゃんって」
「そ、そうですか…?」
それはマズいな………
必死にひた隠ししてきたのも
もしやバレてる……?
最後の小指を塗り終えて……
「はい、終わり。乾くまで動いちゃダメだよ?」
「は、はい……」
膝の上で乾きを待つ。
トップコートを準備したレイさんはニヤリとこっち見つめてる。
な、なんだ…!?
何だかソワソワする。