揺れる被写体〜もっと強く愛して〜
「か、乾きましたっ…!ほら!」
両手を前に出してネイルを見せる。
「チッ」と言ってトップコートを手に取り再び私の爪に塗っていく。
今……チッて言いましたよね?
拗ねてる顔も可愛くて……チラチラしか見れないのが悔しい。
本当はガッツリ見て撮りたいくらい。
触れてる指にも熱が帯びていく。
塗り終わったら
「今度こそジッとしててよ」って小悪魔な笑み。
身動き出来なくなって更にピンチ…!
カメラを手に取り、撮りためたネガを確認しだすレイさん。
「お、ちゃんと撮れてるね〜」なんて言いながら見てくれてると思ってたら突然カメラを構えた。
ヤバ、撮られてる…!?
そのまま上に乗りかかり私はソファーに倒された。
本当にびっくりした時は声が出ないってこのことだ。
「レイさん…!?」
「このアングル……好きなんだ〜」
何枚かシャッターを切られる。
その瞳に耐えれなくて横を向いた。
「ちょ……挑発しないでくださいね?」
「え……?」
「レイさんの挑発……今は耐えれません」
カメラを下ろしたレイさんは
「こっち見てそれ言いなよ」と言う。
目を合わせたらもう終わりだって分かっているのに。
レイさんは、言わせるのも乗せるのも上手い。
顔のすぐ横に手をつかれた。
真っすぐ見下されている。
「私の挑発がなんだって…?」
揺れる瞳………
その聞き方はズルい。
「耐えれないんじゃないでしょ?」
「えっ…!?」
「楓ちゃんは絶対、耐えたくないんだよね…?」
そう言って顔が近付いてきた。
また顔を背けられないよう固定されたまま唇を重ねた。