揺れる被写体〜もっと強く愛して〜
たまにレイさんからのアプローチに戸惑うばかりだが撮影は順調に進んでる。
撮る側から被写体の顔になる瞬間はいつも息を呑む。
目つきが一瞬で変わるの。
皆、鳥肌もんだって口を揃えてるよ。
そして、レイさんじゃないと撮られたくないってモデルさんがほとんどを占めてる。
凄いな……私もいつかはそうなりたい。
元ヘアメイクアーティストだから美容関係の話も多い。
撮影終わった後もレイさんの周りにはモデルさんが溢れてる。
憧れの眼差しで溢れてる。
スタッフ以外にも絶大な信頼を得てるレイさんはどこでも引っ張りだこだ。
中には私のように密かに恋心を抱いているモデルさんも。
見てりゃ瞬時に分かる。
レイさんだって気付いてるはず。
妬いてしまうから見ないようにしてたのに。
モデルさんたちに囲まれても
「打ち合わせあるからまたね〜」と上手くすり抜けて身を焦がす私の元へ来てくれる。
「さ、行こう」って髪を撫でられ優しく微笑む。
皆に見えるようにそうしてくれるとこが嬉しくてつい張り切っちゃう。
次のスケジュールを伝えながら一緒に立ち去る。
楽屋に戻ったら「助かった〜」とソファーに倒れ込むレイさん。
「えっと、良かったんですか?」
「同じ質問ばっかで疲れちゃうよ〜」
「ですよね?その時は今みたいに私を利用しちゃってください」
コーヒーを入れながら背を向けた。
「……利用?違うよ?」
「え?」と振り返る前に後ろから抱きしめられた。
「疲れたまったらこうしたくなるだけ」ってまた耳元で言う……
それ反則ですから。
「コーヒー……飲みますよね?」
「うん…!」
パッと体が離れ「ありがとう」と受け取る。
「そうだった、楓ちゃんには禁欲中でした〜」とおどけながらソファーに戻っていく。
フゥ、危ない危ない。