揺れる被写体〜もっと強く愛して〜



「ですよね〜?でもレイちゃん、昔は僕と仕事してた事あるんすよ。カメラマンになる前はメイクアップアーティストでしたから」




「えっ!?」




思わずレイを見た。
マジかよ……
照れたように笑いながら「本当昔ですけどね」って。
え、なに?俺1人だけが勘違い?




「レイちゃんそれあげるよ、また明日感想聞かせて?じゃあお疲れさま〜」




睨みが効いたのか、そそくさと帰る京一郎。
いざ、スタジオに2人きり。




片付けをしながら
「どうしたんですか?」って答えに困る質問するな。
クスッと笑って
「もしかしてキスしてるって思いました?」と核心に迫ってくる言い方。




「キョウちゃんは私の尊敬してる先輩の1人ですよ?ないない…」




テーブルに腰かけこっちを見る。




「別に気にしてねーよ、勘違いするな。こっち側の人間に手出されたら乱れて困るんだよ」




「……手出してませんけど?新色ルージュにちょっと興奮しちゃっただけで…」




「と、とにかくだな…!何もなくて良かったよ、明日また撮影でな」




「ふーん……」




「な、何だよ」




「いや、血相変えて来たから妬いてくれたのかと思って」




「はぁ!?おめでたい奴だなお前…」




「ハァ……そうですか」




ハァ……ってため息つくんじゃねぇよ。
「じゃあお疲れさまです、電気消しますよー」ってもう出口に立ってる。
慌てて行こうとしたらバチッと消しやがった。




おい……真っ暗じゃねぇか。
この俺にこんな仕打ち……いい度胸だ。
見えないが勘で歩き進めたら案の定何かにぶつかった。




「うわっ…!」




「大丈夫ですか?」って耳元で声がしたから「ひぇっ…!」と何とも情けない声を出してしまった。
またクスクス笑ってる。
クソっ、まだ目が慣れねぇ。






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