揺れる被写体〜もっと強く愛して〜
「もしかして暗いのダメです?」
「ダメじゃねぇよ、ここ、非常灯とかねぇのかよ」
「あぁ、それも消してみました」
「はぁ!?」
「知ってます?本当の暗闇になると……人間の本性が出るみたいですよ?」
クソっ……どこだ?
気配を察知して、ここだ…!と腕を掴む。
よし、捕まえた…!
「本性ってどんな…?こういうことかよ」
腕に触れたら急にレイの体温を感じて思わず抱き寄せる。
フワッと良い香りに包まれて改めて女の柔らかさを感じた。
暗闇の中でも、俺を見上げてることは分かって心拍数は上昇。
吐息がわかるくらいの距離だ…!
「いつもあんな瞳で撮影すんのかよ…」
「え……?ダメ、ですか?」
「ダメじゃねぇけど、あんな瞳で見られたら普通……」
「普通……?」
普通勘違いすんだろ……
それでなくても忙しすぎて皆溜まってんのによ。
そういう目でお前を見てるんだよ、野郎は。
「ハハ。綺麗なモノを撮る時……自然と無意識にあんな瞳になっちゃうんですよ、治しようがない」
「だからってお前……」
お前の方がよっぽど綺麗なんだからって思ってたら人差し指で言葉を遮られた。
「あの、さっきから気になってるんですけど」
「え……?」
「私、お前じゃなくてレイですから」
「は……!?」
「いくら綺麗な人にでもお前呼ばわりはちょっと……」
綺麗な人って俺…!?
「す、すまん……悪かった」
「それと……」ってまだあるのかよ。
「そろそろ放してもらっていいですか?」
……うわっ!
抱き寄せたままだった!!