揺れる被写体〜もっと強く愛して〜
久しぶりに日本に帰国した俺は今、空港でたくさんのファンに囲まれている。
ボディーガードに誘導されロビーを歩くロックバンドGLEAMSの4人。
サングラスを取りファンに手を振れば黄色い声に包まれる。
海外公演も経験値を積んだ分、一回りも二回りもビックになって帰って来たんだぜ。
マネージャーからはやっぱりレイのスケジュールは押さえれなかったと聞いた。
今もどこかで撮り続けてるんだな。
他の誰かにあの瞳を向けてるのかと思えば胸が痛むけど、もう一度奪い返す気持ちで居るから。
待っててくれてるよな……?
知り合いのツテを頼って辿り着いた某スタジアム。
“レイなら今日はガールズコレクションの撮影日だよ”
レイも各国回ってるらしく最近また帰って来たと聞いた。
戻って来ても与えられる仕事は大きなものばかり。
相当スキルも磨きがかかってるとか。
当然、顔パスで入る俺は主催者の元へ。
すれ違う誰もが振り返る。
ランウェイの中央ど真ん中でカメラを構えている姿に胸が熱くなった。
さて、こっちからもサプライズといきますか。
何年ぶり?2年ぶりか……
またひとつ、色気増しやがって。
髪の毛切ったんだな。
柔らかいウェーブヘア、似合ってる。
大歓声に包まれてショーは開幕した。
華やかなキラキラした世界を、お前はどんなふうに表現するんだろうな。
楽しみで仕方ないよ。
カメラを構えたあの瞳にまた逢えるんだよな。
どんな顔するかな。
約束通り、俺は歌い続けたぞ。
お前が居たから乗り越えられた。
お前が心にずっと居たから。
どんなに逢えない夜が俺を苦しめたか……
お前に触れたくて……
あのキスがしたくて……
泣いた夜もあったんだよ……
情けないくらいお前に溺れてる……