揺れる被写体〜もっと強く愛して〜
その日から、撮影終了後に小一時間ほど残ってスタジオでのノウハウを教えてる。
若いからさすが呑み込みも早くて、
いつの間にか教える側が楽しくなっていた。
というより、彼女の感性がぶっ飛んでいて逆に教わるくらいだ。
自然と対等に話してる。
時々垣間見るふとした笑みにまだ高鳴る心臓は出来るだけ誤魔化した。
日に日に濃くなる2人だけの時間。
分かってる。
自分が今、未知の領域に居ることくらい。
あとどのくらい気付かないフリをしたらこの夢は続くのだろう。
いつか覚めると知っていながら深い沼にハマっていく。
「………レイ?」
スタジオの出入口から誰か呼ぶ声がした。
まだ若い金髪の男の子。
ハーフっぽい顔立ち。
「キョウちゃん…?」と彼女も立ち上がる。
レイって南城さんのこと?
「ちょっといい?」
何だか思いつめた様子だったから
「南城さん、今日はもう終わりにしよう?後は片付けておくよ」と言った。
「すみません」
「いいよ、行ってあげて?」
一礼して彼女は彼の元へ駆け寄り、何も言わず髪を撫で手を引いてった。
え……どういう関係なの?
何だか軽い関係性じゃない気がする。
彼が見る彼女への視線。
あれは普通じゃなかった気がするのは思い過ごしか?
「って……何考えてんだよ俺は」
そそくさと後片付けを済ませ、早めの帰路につこうとしたのに。
何でまた、目につく場所に居るんだよ。
聞こえる場所に居るんだよ。