揺れる被写体〜もっと強く愛して〜




「いや、誤解とかじゃなくて……その、俺の方こそごめん」




「いえ、ずっとレイには相談のってもらってて見事に玉砕したんで泣いちゃったんですけど…」




「あぁ……そうなんだ、重ね重ねごめん…」




こんな場合何て言えばいいのか……
本当、自分がこれほど恥ずかしいと思ったことはないよ。
ただの勘違い野郎だ。




「よし、キョウちゃん!今日は飲もう!」




「いいの?明日早くない?」




「ノープロブレム!」




「レイ〜!ありがと〜!」




おいおい……
誤解は解けたがゲイだとわかったとて、2人で飲むのか…?
「家においでよ」とか言ってるし。
どこでどう踏み外すかわかんねぇんだぞ?




「じゃあ帰ります、お疲れさまでした」




「お、おう。お疲れさま…」




2人仲良く行ってしまった……
え、何なの?このオチは。
どっからどう見ても普通のカップルにしか見えん……
遠ざかっていく後ろ姿。
ピタッと止まったかと思えば踵を返し、彼女だけがもう一度俺の元へ駆け足で戻って来た。




え………なに……!?
目の前に来た瞬間、フワッと髪の良い匂いが鼻をかすめた。
少し背伸びして、よくある耳元で内緒話するかのようなシチュエーション。




30も過ぎたオッサンが
たったこれだけのことで心臓が爆発寸前だ。
口元に手を添えて内緒話。




「大丈夫、キョウちゃん、女子には欲情しないんで」




ニヤリと笑い再び彼の元へ駆けていく。
硬直する体。
そう言いながら見せつけるように腕を組んで歩いてる。
これから、本当に失恋飲み会なのか……?




俺は一体、
何に巻き込まれてんだ……!?




何熱くなってんだよ………




彼女が近くに来るたび、
彼女が触れるたび、
彼女が笑うたび、
俺の心臓はバカ正直になる。




危険だって分かってるのに………





俺は何故、
今の場所から引き返さないんだ………










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