揺れる被写体〜もっと強く愛して〜



次の日も普通に仕事をこなしてる。
昨日は……何もなかったんだよな?
三つ編みしてて可愛い、なんて思ってしまうバカな俺。




モデルが到着し早速ヘアメイクに取り掛かる。




「あれ?美麗ちゃーん……?」




メイクの最中、少しかがんだ彼女に対してモデルがニヤニヤしながら話してる。
「何ですか?」とベースファンデを塗りながらクールに聞き返す彼女にモデルが言った一言がスタジオ内に衝撃を与える。




「エヘヘ、キスマーク見っけ。やっぱ彼氏居るんじゃーん」




ゴトッとカメラを落としてしまう俺。
一瞬にして耳まで真っ赤になる彼女を見て愕然とした。
すぐに鏡で確認する彼女は
「いや、違います違います」って動揺しまくりで……




モデルにからかわれてあんなに真っ赤になってたら認めてるようなもんだろ………
アイツ………やっぱ男じゃねぇかよ!
クソっ…!




「ネコですコレ…」って真顔で言ってもこの空気は打破出来ねぇぞ。
鎖骨はリアル過ぎる。
スタッフ全員心の中で泣いてるんだろうな。
どんなふうにつけられたんだろって嫌でも脳裏に浮かぶ。





何事もなかったかのように振る舞うって思ったよりしんどい。
仕事だから割り切れって自分を奮い立たせてる。
何度も「上川さん…?」と二、三度呼ばれて気付くパターン。




片付け中も。
無言でバラしてたらスッと後ろから目隠しされた。
柔らかい手。
細い指。
「だーれだ?」ってすぐに分かる。




何も答えずに手を剥がし振り向いた。
またあの瞳に捕まるから視線を落とす。
悪い、今日は帰るよ……







< 59 / 158 >

この作品をシェア

pagetop