揺れる被写体〜もっと強く愛して〜
確かに今の事務所にはものすごいお世話になっているし、僕を世に出してくれた親みたいな存在だから逆らうつもりはないが。
日本の空港でも駆けつけてくるファンは居る。
マスクにサングラスとキャップをかぶっていてもバレる。
マネージャーが写真は撮られないよう盾になってくれながら足早に迎えの車に乗り込む。
「本当に行くのか?」
「うん、出して?」
「言っとくが見学としてアポを取ってあるからな?」
「レイには伝えてないよね?」
「ああ、そうするように伝えてるよ……ったく、何考えてんだか。いいか、くれぐれも問題だけは…」
「分かってるよ」
日本での撮影現場を見学したい。
建前ではそうなっている。
韓国のモデルとして会いに行くだけだから。
スタジオ前までついてきたマネージャーに外で待っててと伝える。
「大丈夫だよ、マネージャー居たら目立つ」
「でもっ…」
「僕も子供じゃないんだ、ちゃんと自分の立場くらいわきまえてるよ?終わったら連絡するから少し観光でもしてなよ、ここからは一歩も出ないでいるからさ?」
渋々納得してくれたマネージャーに更に安心してもらえるようGPSも起動しておいた。
「迷惑のないようにな?」
ハイハーイ…!
いざ、扉を開ける。
たくさんのスタッフさんが周りを囲んでる。
その中で響くシャッター音。
ゆっくりと足を進める。
何人か僕に気付いてくれて声が挙がる。
「コンニチワ」
キラースマイルで挨拶すれば皆の頬が赤らんで良い気分。
ようやく見えた華奢な背中。
メンズファッションの撮影らしく、近くでは爽快なポップミュージックが流れていた。