揺れる被写体〜もっと強く愛して〜
あまりピンとこなくてカメラの方を見たら、メグミちゃんが僕の手を取り顎に添えさせた。
「こうやってするの」
あぁ、そういうことか。
ドラマでもやったことある。
日本では顎クイと言うのか。
真っすぐメグミちゃんを見つめて数秒間。
これくらい、何とも思わない。
シャッター音が止まる。
「もっと近付いて」
指示通りもう少し近付いてみる。
頬が赤らむメグミちゃんを見つめながら静止する。
「もっと…」
「え…?」
これ以上…?
本当にキスする寸前だよ…?
角度によっちゃしてる風に見える。
「まだいけるんじゃない?」
待って、煽ってる…?
これ以上は無理だとカメラに目を向けた。
ていうか、カメラさえ構えていない。
「レイさん、ちょっとやり過ぎじゃ…」
メグミちゃんも耐えきれずそう言ってる。
一体、何が目的なの…!?
僕にキスさせたいの…!?
メグミちゃんが可哀想だよ。
役者経験なんてないだろ。
「一旦、休憩」
その一言でピリついた空気から解放された現場。
人々は捌けていくけど僕はまたヘビに睨まれたカエル状態で。
カメラを置いて僕の元に来たレイは勢いよく壁に手をついた。
「あの時のプロ根性、どこに行ったの?」
「え…!?」
「忘れたとは言わせないよ?ソウルで見せてくれたあの瞳しなさいよ」
「お、覚えててくれたんだ…?」
「ハ?私が自分で撮った被写体忘れるわけないでしょ」
「僕だって…!忘れられないからここまで来たんだ…!レイにもう一度会いたくて…!ちゃんと伝えたくて…!」