想われて・・・オフィスで始まるSecret Lovestory
直斗さんの言葉で、わたしの中に生意気にも野心が芽生えてきてしまった。
デザインに関わるものにとっては、憧れの地であるミラノ。プロポーズうんぬんは別として、留学のチャンスなんてそうあるものじゃない。

思えば卒業旅行先はイタリアだった。美術館を巡って、有名な建造物を観て回った。
中世の面影が残る石畳の道を歩いているだけで、幸せな心地になれた。

「こんなところに留学できたら最高だよね」
同級生とそんな会話をしてたっけ。

大学を卒業して四年、デザイン会社で経験を積んで。ミラノの大学院に留学できたら。
インテリアコーディネーター、もっといえばインテリアデザインに関わる夢に、近づけるんだろうか。

とりとめのない思考が、ぐるぐると頭の中をかけ巡る。

その日、佐倉さんは打ち合わせが長引いて、帰宅は夜10時を回っていた。

「ただいま」
「お帰りなさい」

出迎えたわたしに鞄を渡す。その手がふと止まった。

美織、とわたしの顔をのぞきこむ。
「何かあったのか?」
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