想われて・・・オフィスで始まるSecret Lovestory
そんなに顔に出ているのか、と自分にあきれてしまう。
「あの、圭介さん、聞きたいことが…」と切り出した。

リビングのソファにふたりで腰をおろした。向かい合うのではなく、L字のソファのIと_の辺にそれぞれかける。いわゆる直角の位置だ。
営業でよく言われることだけど、正面に向かい合うのは対立の位置といって緊張を生みやすい。
クライアントとは立ち話でも、なるべく直角の位置を心がけるようにと教えられたことが習い性になっている。

「今日、直斗さんに話があるって屋上に呼ばれたんです———」

それだけで、佐倉さんはおおよその事情を察した様子だ。

「彼がチームを離れること、圭介さんは知ってたの?」

上司だからな、と佐倉さんはうなずいて答える。
「社内コンペでは直斗の作品を一番に推薦した。大学院に提出する論文にもいくらかアドバイスした」

やっぱり佐倉さんは知っていたんだ。当たり前だけど、どこかで落胆している自分もいる。

「あいつはただ小器用なやつじゃない。広告代理店出身だけあって、時代の流れや顧客のニーズを読む感覚は抜群だ。建築でもインテリアでもしっかり学べば、必ず才能を伸ばせるはずだ」
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