切愛願望~極上御曹司の庇護欲からは逃げられない~
悪い気がしない訳でもないけど、人と馴れ合うのは好きじゃない。あまり自分のことを聞かれたくないから。
決まった用事というのはない。でも、行く場所はある。
それは、私が足繁く通っているカフェ『ノワール』。
場所は銀座にあり、会社からだと徒歩で二十分程。
高級ブランド店が並ぶ裏通りにそのカフェはひっそりと佇んでいて、外観は大正ロマンを思わせるような見事な木造建築。
ガラガラッとピカピカに磨かれた木製の引き戸を開ければ、そこはノスタルジックな空間。アンティークの椅子とテーブルが並んでいて、店内にはバロック音楽が流れている。
中に入ると、店の顔といってもいい超絶美形がカウンター越しににこやかに微笑んだ。
「やあ、美月ちゃん、いらっしゃい」
「こんにちは、玲司さん」
彼の笑顔を見ると、心が和む。
真田玲司さんはこのカフェのオーナーで、年は三十歳。
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