あなどれないね、世唯くん。
「ち、千景くんが……寝ぼけてキスしてきたのに」
今さらながら、ファーストキスだってことに気がついて、なんだか悲しくなって唇に手を当てる。
まさか寝ぼけた相手にファーストキスを奪われたなんて……。
しかも、わたしじゃない女の子の名前を呼んで……。きっと、そばにいるのがその子だと思って、唇を重ねたに違いない……。
そう思うと、胸が張り裂けそうなくらい苦しい。
「……あー、ごめんね。
そんな泣きそうな顔しないで」
「ファーストキス…だったのに……」
不可抗力だってわかってるけど、なぜか虚しくて心に穴があきそう。
それはきっと、千景くんが他の子を想いながらわたしにあんな甘いキスをしてきたから…。
「……そんなに嫌だった?俺とのキス」
さっき取ったはずの距離は、千景くんが近づいてくることで再びゼロになりそうになる。
「嫌とか……そういう問題じゃなく…て」
「じゃあどういう問題?」