卑劣恋愛
そう言われると何も言い返せなくなってしまう。


「まぁまぁ、そう怒らないで? 今日はご褒美をあげに来たんだから、ね?」


千恵美はそう言うと、武の肩を軽く叩いた。


それが合図だったようで、武があたしに近づいてくる。


そして目の前で足を止めた。


今まで経験したことがないくらい至近距離に武の顔がある。


あたしの心臓は一気に早鐘を打ち始めた。


カッと顔が熱くなり、真っ赤になっているのが自分でもわかった。


何枚隠し撮り写真を撮ったって、これほどのドキドキを感じたことは今まで1度もなかった。


「武……なにをするの?」


あたしが質問をすると同時に、武の唇があたしの唇に触れていた。


それはほんの一瞬の出来事で、でも永遠のように長かった。
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