卑劣恋愛
溶ける
水分補給をしたことで少し元気がでたあたしは、横になった状態で壁を蹴り上げた。


これなら声を上げるよりもずっと大きな音がする。


運がよければこの小屋も壊れてくれるかもしれない。


所々コンクリートにひびが入っている壁を見て、そう考えたのだ。


しかし、思ったようにはいかない。


いくら明るい時間帯でも山の中に入って来る人なんて、そういない。


時々聞こえてくるのは風の音を虫や動物の声ばかりだ。


やがて、日は落ち始めた。


山の中は太陽の光が届かなくなるのも早くて、あっという間に1日が終わってしまう。


夜になると、あたしは窓の近くまで移動して膝立ちをした。


外の様子を確認するけれど人の気配は感じられない。


それでも、ライトを持った誰かが歩いてこないかと、あたしは待ち続けたのだった。

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