卑劣恋愛
あたしは大きく息を吸い込んだ。


本当は、嘘でもこんなこと言いたくなかった。


武が知ればきっと傷ついてしまうだろう。


それでも、邪魔者を消すためには仲間が必要みたいだ。


「……わかった。ちゃんと認める」



そう口にすると、すべての体力を使い果たした気分になった。


全身から力が抜けて行き、その場に座り込んでしまった。


それとは反対に智樹は安堵したように笑みを浮かべた。


あたしの隣に座り込んで「よかった。認めてくれて」と、息を吐きだす。


あたしはこの男をいますぐ殴りつけてしまいたい感情に駆られたけれど、グッと我慢した。


「それで……具体的にはなにを協力してくれるの?」


あたしは気を取り直して質問をした。


「あぁ。なんだってやるよ?」


智樹はさきほどまでと変わらない笑顔で言う。
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