卑劣恋愛
しかし、その計画はもろくも崩れ去っていた。


武が部活から戻って来る前に、千恵美が教室に入って来たのだ。


いつもと変わらない様子でクラスメートたちに「おはよう」と、声をかける千恵美。


「千恵美、今日の髪型可愛いね」


「そう? 気分転換に編み込みにしてみたの」


そんな会話が聞こえてきてあたしは唖然としてしまった。


今日は千恵美は学校に来ないはずだ。


だって、昨日智樹に暴行されているのだから、来れるはずがないんだ。


「どうしたノドカ、ぼーっとしちゃって」


真由子があたしの顔の前で手を振ってそう聞いて来た。


ついさっきまで真由子と話をしていた気がするけれど、会話の内容も思い出せなかった。


あたしは大股に千恵美に近づいて行くと、その肩を叩いた。


「ノドカ、どうしたの?」


千恵美は笑顔で首をかしげてそう聞いて来た。


その様子はいつも通り……ううん、いつもよりも元気そうであたしは言葉を無くしてしまった。
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