卑劣恋愛
あたしは振り返り、そんな智樹を睨み上げた。


「昨日失敗したんでしょ」


そう聞くと、智樹は目を丸くして周囲を確認した。


「心配しなくても誰にも聞かれてないよ。それより、あたしの質問に答えて」


低く、抗議するような声で言うと、智樹はフッと肩の力を抜いた。


そして、ほほ笑む。


「成功したよ」


は……?


あたしは智樹の言葉に瞬きをした。


「なに言ってんの? 千恵美を襲うことはできなかったんだよね?」


「いや。成功した」


その言葉に血が頭に上って行く。


それならどうして千恵美は今日登校してきたんだ。


どうしてあんなに元気そうなんだ。


おかしいじゃないか。
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