卑劣恋愛
そう、文句を連ねようとしたとき、智樹が再び口を開いた。


「千恵美は、俺のことが好きらしい」


「え……?」


智樹の言葉の意味が理解できなくて、あたしの思考回路は完全に停止してしまった。


千恵美は智樹のことが好き……?


「なに言ってんの? そんなわけないじゃん!」


あたしは思わず声を荒げてしまう。


千恵美が好きなのは武のはずだ。


じゃないと、武の写真に毎回映りこんでいる理由にならない。


「その推理は最初から間違ってたんだ」


「どういう意味……?」


「千恵美が武につきまとってたんじゃなくて、武が千恵美に付きまとってたんだ。もう、気が付いてたんだろ?」


呆れたような智樹の声。


「千恵美は昨日、俺に襲われながらも幸せそうに笑ってたよ」


幸せそうに……。
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