とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
これでいい。色々探ったところで、私が一矢くんを全く信用していないみたいで心が重くなる。

 私に急接触してきたのは、美里の結婚をきっかけに仕事先がバレたから。

 それなのに、祖父と一矢くんが仲良く話しているのと、母と一矢くんが接触していることで、――何か裏があるのかと勘ぐってしまっちゃった。

「もちろん、これからも仲良くしていただきたい。一矢くんの初恋の君ですし」

「そんなんじゃないですよ」

「でも紗矢のお父さんが社長を退いて、代表取締役に就任したときの祝賀会。あの時に君の母親である玲華さんと一矢くん、和やかに話していたからさ。すでにあの時からお見合いを考えていたんじゃないかな」

「……それっていつの話ですか?」

「2,3年前じゃないかな」

和やかに、か。

じゃあ母と一矢くんもその頃にはすでに交流があって。

だからおじいちゃんの歯科医院の経営が傾いた時に、母が頼ったってこと?

それとももしかして――経営悪化が嘘だとしたら。

もし嘘だとしたら、私は母と一矢くんに騙されて強制婚されそうになっていたのかな。

「……」

「喬一さん、ごめんなさい。やっぱまだ外の散歩は無理かもしれないです」

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