とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
「髪を手入れして、艶やかになって、どんどん綺麗になっていく娘が自慢だった。ああ、恋をしてるのねって。ついに恋バナができるって楽しみだったのに。貴方が髪を切られ失神した日、忘れもしないわ。弁護士なんてつけず、私の手で相手を殺してやろうかと思った」
「あはは。あの時の記憶は鮮明じゃないけど、おじいちゃんたちから聞いてたから知ってるよ」
「恋をして楽しそうだった。それが綺麗な髪ごと壊された。やっと育っていた恋が。一生許せられないと思っていたのよ。でも一矢くん、いまだに貴方を思っていたようだから、めちゃくちゃに傷つけられて去っていけばいいと思ったし」
クスクス笑う。
「貴方の初恋が成就できたらいいなと思ったのよ」
「賭けだったの?」
「だって私じゃ相手を痛めつけて終わり。でも華怜はそんなこと望んでなかったでしょ。でもしつこい一矢くんの粘り勝ちみたいねえ」
私を頭の上からつま先まで観察したあと、口に手をあてて頷く。
「良かった。爪先だけじゃない」
「敵わないなあ……少し意地悪しようと来たのに」
ヒステリックではないときの母は、私より何枚も上手だ。
「後悔してたの。もし私があの時、貴方を女子校へ転校させなければ。一矢くんが毎日謝りに来ていた時、一度でも家に上げていたら。私が弁護士まで投入して引き裂かなかったら――貴方は恋から逃げなかったのかなって」
「あはは。あの時の記憶は鮮明じゃないけど、おじいちゃんたちから聞いてたから知ってるよ」
「恋をして楽しそうだった。それが綺麗な髪ごと壊された。やっと育っていた恋が。一生許せられないと思っていたのよ。でも一矢くん、いまだに貴方を思っていたようだから、めちゃくちゃに傷つけられて去っていけばいいと思ったし」
クスクス笑う。
「貴方の初恋が成就できたらいいなと思ったのよ」
「賭けだったの?」
「だって私じゃ相手を痛めつけて終わり。でも華怜はそんなこと望んでなかったでしょ。でもしつこい一矢くんの粘り勝ちみたいねえ」
私を頭の上からつま先まで観察したあと、口に手をあてて頷く。
「良かった。爪先だけじゃない」
「敵わないなあ……少し意地悪しようと来たのに」
ヒステリックではないときの母は、私より何枚も上手だ。
「後悔してたの。もし私があの時、貴方を女子校へ転校させなければ。一矢くんが毎日謝りに来ていた時、一度でも家に上げていたら。私が弁護士まで投入して引き裂かなかったら――貴方は恋から逃げなかったのかなって」