とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
「うん。私たちは母の手の上で転がされてたよ」

「こわっ」

そう言いながらも楽しそうに微笑んでいる。

「……良い母親かって言われたら、完璧じゃないのよ? お父さんとの喧嘩にエルメスのお皿を投げるようなヒステリックな部分もあるし」

 あれは確か、出張先の番号を間違えて尋ねた先のホテルで父が停まっていると思った部屋から女性が出迎えたからだったけど。あれは確かに父がなかなか謝らなかったけども。

「あはは。華怜と喧嘩するときはお皿、隠しとく」

「私はしませんっ」

勿体ないし、片づけは大変だし、危ないのに。

「……でも感情の起伏は激しいけど、女性としてはわたしのことをちゃんとわかってた。そこだけは尊敬するしかないよ」

「ん。素敵な人だと思うよ。まあいつでもお前なんて捻ってやれるよって手のひらの俺に思ってるのかもだけど、それでも華怜のことを大切に思ってる」

悔しいけど、一矢くんでさえ分かっていたらしい。

一歩距離を置いたら私も母のいいところが見れた。

「それにしても、ここのカフェお洒落だね。奥にプールあるじゃん」

「ここ、結婚式の二次会に人気みたい。二階にアンティーク調の王室図書館をコンセプトにしたカフェが連携しててね、美里のお気に入りなの」

「……へえ」
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