とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
なんてお人よしに笑うから、常備していた小さな折り畳みの傘を必死で手を伸ばして彼を雨から隠した。

申し訳なさそうに笑う彼は、「ここのエビフライの乗ったロコモコ弁当が美味しいんだって」と二つの紙袋をカサカサ鳴らした。

結局、お互い少しずつ濡れて車に戻ってから、私は濡れた彼の髪に触れた。

「……お願いがあるんだけど」

「ん?」

優しく聞き返してくれる彼を見たら、気持ちが溢れそうになった。

「私、上手く伝えられないけど、一矢くんだけ頑張るのは嫌だから、一緒に進んでいきたいの」

「……焦らせた?」

目をパチパチさせて驚くから、悔しくて濡れた髪を撫でた後、だらしなくとろけた頬を抓る。

「一矢くんから一方的に、好き好き光線が出てるけど、私も、それを出したいってこと。……ちゃんと私も好きなのに、どう表現していい分からず、ずるいっていうか」

言葉にも態度にもうまく出ない。

恋を知らなかったんじゃなくて、恋とか恋愛とか異性から散々逃げてきた私のせいだけど、でも私も伝えたかった。

「華怜は可愛いよな」

彼が私の濡れた髪に手を伸ばすと、ゆっくりと口づけた。

「華怜から触れてくるたびに、俺も触れていいのかなって期待してしまう」

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