とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
「でも両手は塞がってないから」

「え、えー!?」

 一矢くんがワインを持っていない方の手を差し出してきたので握手したら、チョップされた。

 手をつなぐって、大人がやったら恥ずかしいと思うのだけど。

 きらきらした少年みたいな一矢くんの期待に満ちた瞳に、抗う強い意志は私にはなかった。

「雨降りそうだけど、大丈夫? 店はここから近い?」

「歩いて10分もないよ。ほら、一回、一矢くんが迎えに来て「俺にしろ」って言った場所」

「台詞が誇大されてるが、本心はそっちだった」

手をつなぎながら、からかうつもりが甘い雰囲気になって墓穴を掘ってしまった。

つないだ手が熱くなるので隠せようがない。

「でも雨が降りそうだからタクシーにする?」

 私を心配してくれる一矢くんの優しさが嬉しかったけど、首を振る。

「ううん。一矢くんが隣にいるなら最近は雷も怖くないの。ちょっとだけだけど」

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