とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
「あとは、華怜が耳に髪をかけたり、櫛で梳いてるときかな。ああ、この綺麗な髪がまるで流れるよう雨のように伸びていくんだなって」

「ひ。し、詩人」

 流れる雨って。

 でも確かに最近、耳の下まで髪が伸びたから耳にかけてる。

「結婚ってさ、好きだけで決めて、そのあとに色々と面倒なこともあると思うんだよ。俺たちは好きで一緒になったんだから、邪魔するなって思うけどさ、大人なんだから最低限の挨拶や手続きだけでもまあ、ね」

「……確かに」

 一矢くんはどんなに多忙でも、私の祖父だからってだけで飛んできたり。

 私も逃げている結婚式や、これから働くことも、旅行に行きたいって言ってたのに私の都合で少し待ってもらうかもしれない。

 沢山話し合うことが増えていく。楽しく甘い時間だけではない。

「でもさ、どんなに忙しくても、大変でも俺は華怜の髪が伸びていくのを隣で感じられるんだ。それだけでも幸せで、俺は満たされる。願わくは、俺が華怜にとって雷を忘れられる存在に慣れるようにって。同じ気持ちで隣にいたいなって」

 一矢くんの考えに目を大きく見開いてしまった。

 面倒なこと、大変なこと、辛いこと、それらが全て、私の髪が伸びているのを体感できるだけで乗り越えられる。

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