とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
耳まで真っ赤だった彼は、観念するように深く息を吐く。

「うん。そうだった。華怜さんは昔からそんな人だったよね。うん」

「何」

「じゃあお願いしようかなって」 

うん、うんと自分を納得させているのか、落ち着かせているのか、不思議だ。

顔を覗き込むと、逸らされた。

「自分の設定を忘れてるぞ。男性恐怖症なんだろ」

「設定じゃないけど、でも一矢くんは最初から怖くなかった気がする」

「じゃあ、着替えるから見るな」

真っ赤な彼を私は覗き込む、彼はそらす。

くるくると廊下で回っている私たちは滑稽だろう。

「そんなに見たいなら、脱ぐ。下着だけになるぞ!」

「それは嫌だな。イケメンでも脛毛は汚い」

「……あのなあ」

髪を掻き上げながら、ふとまた顔を真っ赤にしていた。

「タコとか明太子よりも真っ赤」

「……華怜さんに容姿を褒められると思っていなかったから」

あまりにも可愛い反応に、ちょっと驚いた。

なので私はとりあえず「さん付けは背中が痒くなるので、呼び捨てでどうぞ」と誤魔化した。

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