とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。


『男性恐怖症って診断受けたわけじゃないんだ』

今朝、普通に彼と話していたら私の男性恐怖症の話になって、病院に通っていなかったことを驚かれた。

 確かに、原拠のはずの彼と普通に話せる時点で自分でも急に嘘くさく感じる。

 でも狂言と思われるのも嫌だ。男性とコミュニケーションをとるのを全力で避けていたのは本当だし。

「美香さん」

「ほいほい、ちょっと待って。今、携帯に来月の予約をまとめて音声入力してるから」

平日の午前中の暇なこと。

午後からは結構予約が入っているけど午前中は暇なことが多い。

意味なく在庫確認したり、窓を拭いたり、SNSに作品を投稿して営業したり。

「で、どうしたの? ネイル変える?」

「いえ。私、もしかしたら男性恐怖症治ったかもしれません」

「へえ!? なんで? 嘘ぉ」

一人ずつ観葉植物やスペースを開けてから机を配置しているのに、美香さんが隣から椅子を走らせながら隣にやってくる。

そこまで密着しなくても聞こえるのに。

「なぜか目を見て話せる相手が現れたんです」

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