とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
すぐに三人は意気投合し、楽しそうに会話をし出した。

私はグラスを持つ手が、汗でじんわり湿っていたが、まだ恐怖は感じていない。

本当に平気になったのかもしれない。

その後、パスタやピザが届いて私たちは奥の半個室へ向かった。

美香さんが率先して取分けしてくれたので、私は横でちびちびカクテルを飲むだけで済んだ。

悪い雰囲気にはならず、楽しく店長とサロンの旦那さんの馴れ初めについて熱く語ったり。お店の苦労話に花を咲かせていた。

「華怜ちゃん、次何を頼む?」

空になったグラスを指さし、辻さんがメニューを渡してくる。

その後ろで美香さんが化粧直しへ向かうのが見えた。

一つ席を詰めて、近づいてくる辻さんに急に悪寒が走った。

「ゆっくり決めていいよ。華怜ちゃんの隣に長く居たいから」

「きついお酒はやめといた方がいいよー。辻さん、酔った女性には紳士じゃないし」

「牧」

こら、と窘めつつも否定しない彼の様子が不気味だった。

「本当に男性恐怖症じゃなくなったの?」

「えっと、まだわかりません」

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