極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
玄関マットの上でそのような話をしていたら、廊下の奥に靴音が響いて聞こえ、ふたり揃ってハッとした。

無人だと聞かされ、気を抜いていたのに、誰かがいたらしい。


一尾はそれまでの気楽な雰囲気を消して、睨むようにT字になっている廊下の奥を見た。

「誰だ?」

その問いかけに、廊下の角を曲がって姿を現したのは、黒いワイシャツ姿の龍司である。


「わ、若頭、帰られたはずでは……」

「仕事が終わらず残ったいた。それで、これはどういう状況なんだ?」


ゆっくりとした足取りで近づいてきた龍司は、声を荒げずに問い詰める。

眉間には深い皺が刻まれ、一尾が明らかに動揺していた。


実乃里もうろたえている。

恋する彼女なので、来るなと言われていた事務所に入ってしまったことよりも、一尾との深い関係性を疑われたのではないかと、そのことを真っ先に不安に思っていた。


「違うんです。私は一尾さんとーー」

焦る実乃里が一尾との男女の関係を否定しようとしたら、それを遮るように隣で一尾が頭を下げた。


「若頭、すみません。俺が事務所に泊まれと言いました。今すぐ出ていきます。ロイヤルの姉ちゃんは、俺の家に連れていきます」

「ええっ!?」


いくら困っている状況でも、こんな深夜に、好きでもない男の自宅に上がり込みたくないと実乃里は思う。

それに加えて、一尾との仲をさらに疑われそうな発言をされてしまい、実乃里の焦りは加速した。

(どうしよう、乗り換えたのかと思われたかな。私は龍司さんひと筋なのに……)


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